和歌山IR・カジノの「看板貸し」疑惑について

和歌山県のIR・カジノ誘致計画が思うように進んでいない。

本命だったサンシティが辞退し、第2候補のカナダのクレアベストと日本法人のクレアベストニームベンチャーズが7月に選定された。

このクレアベストのことを少し調べてみたが、調べれば調べるほど疑惑だらけである。

 

11月末時点で、未だに誰が責任をもって運営し、お金を誰が出すのかが定っておらず、IR特別委員会では推進派の議員からも「蜃気楼を見て議論をしているようだ*1」と厳しい発言を突き付けられている。

 

そもそも「クレアベストという会社が選定されているのに、なぜ運営者や資金の提供者が決まっていないのか?」と普通の人は思うだろう。そのことを整理したいと思う。

 

・クレアベストはどういう会社か?

県に選定されたのはクレアベストというカナダの投資会社である。投資会社なので実はお金を出すだけで、カジノを実際に運営している会社ではない。要はカジノのライセンスを取得し、他の業者にカジノをやってもらって、儲ける。そういう会社だ。しかも投資会社なので儲かるのであれば、カジノライセンスそのものも手放して利益を得る。実際クレアベストが持っていたカジノライセンス10のうち4つは取得から10年以内にイグジット(売却)している。

 

腰をすえて和歌山のためにやろうか、と思っている会社ではない。また儲からなければ即撤退する。そう考えておくぐらいがちょうどよい会社だ。

 

 

・クレアベストニームベンチャーズはどういう会社か?

もう一つ県に選定されたクレアベストニームベンチャーズという会社は、クレアベストが日本でIR事業を行うために作った法人だ。実際にこの会社が代表となって事業計画を作成している。

 

このクレアベストニームベンチャーズがIR特別委員会で問題になっている。

というのは令和3年の8月25日に県と基本協定締結するまでと、協定締結後では全く実質・実態の異なる会社になっているからだ。基本協定締結前では代表者と支配株主はグプタ氏だったが、協定締結後には代表者と支配株主がエディ氏にかわっていたのだ。わかりやすく言うと、県と協定を結んだ直後に会社をエディ氏に売ったということだ。県もそのことは認めているものの「計画のブラッシュアップのため」という苦しい説明に終始している。

 

 

・誰が運営するのか?

クレアベストは投資会社なので実際にカジノを行う事業者が必要となる。11月末時点ではシーザーズが運営する予定だといわれている*2が、県はまだ正式には認めていない。

 

シーザーズはアメリカでカジノ事業を行っている会社だ。2018年から関東、北海道でのIRライセンス獲得に参加していたが、2019年8月に日本のIRから撤退することを表明した。経営はうまくいかず2020年7月エルドラド・リゾーツに買収されている。リストラ中なので今回の和歌山カジノにはお金は出せないと公言している。たよりない空気がそこはかとなく漂っている会社である。

 


実はシーザーズの前にもクレアベストが発表した提携業者がある。パルトゥーシュというフランスのカジノ会社だ*3。このパルトゥーシュは長崎IRで落選した事業者である。ちなみに現状ではシーザーズとパルトゥーシュが共同でカジノを行う案はなく、パルトゥーシュ運営案はボツになったようだ。先ほどクレアベストニームの実質支配者が協定後にエディ氏に変わったと説明したが、実はエディ氏はその長崎IR落選組に名を連ねていた人物なのである。

 

 

・まとめ

いろんな会社や人物がでてきたがシンプルに整理すると次のようになる。

当初グプタ氏が経営していたクレアベストニームベンチャーズという会社が和歌山IRの「看板」を取得した。「看板」取得後、経営権そのものを長崎IR落選組のエディ氏に譲渡した。投資会社なので実際にカジノを運営する業者を探し、候補として長崎落選組のパルトゥーシュと関東・北海道IR撤退組のシーザーズの2社があがった。交渉の結果、現状ではシーザーズが運営する予定で計画を進めている。

 

エディ氏がクレアベストニームベンチャーズの経営権を持つということは、要するにクレアベストニームベンチャーズの中身が丸ごと他所のIRに付け替わったということである。

 

このことは当然IR特別委員会でも問題となっており、議員からは、「表現は悪いが、クレアベストは最初から自身の看板を貸すだけで、実際はカジノの専門家が裏にいて、和歌山県に一杯食わしたというか、そのように感じてならない。*4」だとか「平たく言えば、この間まで長崎でやっていた人が、和歌山が空いたので来た。和歌山である程度成果が出たら他所へ変わるという可能性もある。信用がついてきたら企業を売れるからである。そういうことが起こらないようにしてほしい。*5」などビックリするようなやりとりが議事録に残っている*6

 

このような看板貸しの業者を相手に県民の将来を左右する事業を任せてよいのか、そのことが今問われている。