映画

考察:片渕須直の「アリーテ姫」(その4)

(考察その3の続き) アリーテ姫はしばしば自分の手をじっと見て、「自分の中にも魔法があるはずだ」と自分の可能性を信じ、そして行動する。 『アリーテ姫』とはあきらめない少女の物語である。彼女は何をあきらめないかって? 自分自身のことを、だ。 だ…

考察:片渕須直の「アリーテ姫」(その3)

(考察その2の続き) 中年の危機を背負ったアリーテ姫は、原作との距離を広げていく。 ここは原作には申し訳ないところなのだけれど、世界にはそうやすやすと主人公に微笑みかけてもらいたくなどない。ここは厳然と厳しい顔でい続けてほしかった。そういう…

考察:片渕須直の「アリーテ姫」(その2)

(考察その1の続き) 監督のエッセイ「終わらない物語」には「アリーテ姫」について知りたいことがだいたい書いてあった。書かれすぎなぐらい。 終らない物語 作者:片渕 須直 フリースタイル Amazon この本には様々な事柄がとりとめとなく書かれている。た…

考察:片渕須直の「アリーテ姫」(その1)

少し前に片渕須直の映画「アリーテ姫」を初めて観た。ビジュアルやキャラクターがとても素朴で、大げさで派手な演出は抑えられている。それが良い意味で作品を引き立てていた。生きるために大事なメッセージをとても丁寧に語りかけてくれる。良い作品のお手…

映画:君たちはどう生きるか(感想)

宮崎駿の「君たちはどう生きるか」を先週観てきた。 宮崎駿の映像は嫌いではないが、観終わった後にうっすらとした喪失感が残った。自分の頭の中を整理するためにこの”うっすらとした喪失感”について書き残しておく。 この映画は吉野源三郎の同名小説からタ…

庵野秀明と黒澤明(殺陣の否定、マルチカム撮影)

・殺陣の否定 少し前に「シン・仮面ライダー」のメイキングが賛否両論を巻き起こしていた。僕自身まだ映画を見ていないのでなんとも言えないが、そのドキュメンタリーの中で庵野監督はしきりに次のことを強調していた。 ≪頭の中が殺陣でいっぱいになってる≫ …

映画:「かぐや姫の物語」(考察その4)

考察その3からの続き ・私たち自身の物語 かぐや姫の悲劇は「地球に生を受けたにもかかわらず、その生を輝かすことができないでいる私たち自身の物語」と企画書に書かれている。実際に映画は「生きる」ということが主題として描かれている。おおざっぱに区…

映画:「かぐや姫の物語」(考察その3)

考察その2の続きです。 ・東映動画時代の企画 企画書ではしきりに「隠されているはずの挿話を掘り起こす」、「かぐや姫の本当の物語を探り当てる」と書かれている。「隠された挿話」が何かを探るまえに、東映動画時代の企画をおさらいしておく。当時のコン…

映画:「かぐや姫の物語」(考察その2)

考察その1の続きです。 ・「かぐや姫の物語」は「竹取物語」の謎解きか? 高畑は原作の「竹取物語」の”本質”を裏切りを“換骨奪胎”し、かぐや姫側の物語にスポットを当てる。そこに”隠されているはずの挿話”を掘り起こし、原作では未解決だった数々の疑問に…

映画:「かぐや姫の物語」(考察その1)

・高畑監督は何を考えて「かぐや姫の物語」を作ったのか 「かぐや姫の物語」は受け手によって様々な解釈がされている。ジェンダー、死生観などが典型だろうか。なんとなくつかみどころがなく、底なし沼のように深い(ように私は感じる)この不思議な作品を、…